相続税申告のポイント⑥~正面路線の判定方法等

  路線価方式での評価において、複数の路線に接しているときには、どの路線を正面路線とすればいいのでしょうか。 

正面路線は、原則として接する各路線の『路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額』が一番高い路線とされています(財産評価基本通達(16)。単純にいちばん高い路線を正面路線とするのは誤りです。 

ここで、接する各路線の地区区分が異なる場合には、それぞれの路線の地区区分に応じた奥行価格補正率を適用して計算したうえで、正面路線の判定を行うことに注意が必要です。 

例えば、対象地が普通住宅地区と中小工場地区の路線に接している場合、正面路線価を決定する際の奥行価格補正率はそれぞれの地区区分に適用される補正率で計算して判定するということです。 

(地区区分が異なる場合の正面路線価の判定例は、当ブログの「やさしい財産評価入門⑧~路線価の計算(複数路線の場合)」を参照) 

なお、正面路線が決定した後の評価計算、つまり側方や二方路線の奥行価格補正率や側方(二方)路線影響加算率、その他の地区区分により補正率の異なるものの適用については、側方(または二方)路線の地区区分が何であるかにかかわらずすべて正面路線の地区区分の補正率によって計算します。 

先ほど、正面路線を判定する際の各路線価に乗ずる奥行価格補正率は、それぞれの路線の地区区分に適用される補正率を適用して計算すると言いましたが、正面路線が決まったらその後の評価計算においてはすべて正面路線の地区区分の補正率を適用します。この点、混同することのないよう注意が必要です。 

(具体的計算例は、当ブログの「やさしい財産評価入門⑨~路線価の計算(複数路線の場合)」を参照) 

奥行価格補正率を適用する場合の奥行距離は、不整形地の場合、①その土地の想定整形地の奥行距離と、②平均奥行(その土地の地積÷間口距離)のどちらか短い方とされています。 

したがって、奥行距離は〈 地積÷間口距離 〉の数字より大きくなることはないので注意してください。 

(間口距離については、当ブログの「やさしい財産評価入門⑦~奥行距離と間口距離」を参照) 

 不整形地の場合、正面路線からの奥行距離と裏面路線からの奥行距離は通常異なったものになります。また、当然ですが側方路線からの奥行距離も異なります。 

正面路線を判定する際、また評価計算の奥行価格補正率の適用の際には、それぞれの路線からの奥行距離により計算することに注意してください。 

不整形地の場合は、それぞれの路線からの間口距離と想定整形地の奥行距離を求めておく必要があります。(想定整形地については不整形地の評価の回で詳しく解説します。)

 左図の奥行距離の計算例 

Ⓐ        (地積)(間口距離)    (奥行距離) 

A路線からの奥行距離 180㎡÷15m=1213 12m 

B路線からの奥行距離 180㎡÷10m=1813 13

 

Ⓑ        (地積)(間口距離)    (奥行距離) 

A路線からの奥行距離 165㎡÷15m=1113 11m 

C路線からの奥行距離 165㎡÷11m=1514 14

※筆者の作成した「Excel土地評価明細書」には、正面路線価の判定が誤っていたときの注意表示機能があります。また、入力した奥行距離が平均奥行を超えていた場合も注意表示します。 

次回に続く