相続税申告のポイント⑫~評価作業に用いる図面

 今回は、想定整形地を作図するなどの評価作業をする際に、どのような図面を用いたらよいかというお話をさせていただきます。 

想定整形地を作図するのに「公図」を用いる方もいると思いますが、次の理由から、公図はお勧めできません。

 公図とは、地図(不動産登記法14条地図)が備え付けられるまでの間、地図に準ずる図面として法務局に備え付けられている図面のことで、土地の大まかな位置や形状を知るための資料とされています。(「法14条地図」と「公図」は同じ様式であり、請求方法も一つですので、混同している方もいると思いますが、似て非なるものであり、明確に区分する必要があります。公図は、その下欄の「分類」欄に『地図に準ずる図面』と記載があるものです。一方、同欄に『地図(法第14条第1項)』と記載があるものが「地図」です。「地図」は精度が高いですが、整備されているのはわずかとされています。) 

公図の多くは作成時期が古く、土地の形状が現況と大きく異なる場合もあって、精度が低いと言えます。そのような図面で想定整形地を作図しても、正確な奥行や間口距離等を求めるのは難しいでしょう。 

想定整形地を作図するための図面としては、できるだけ精度の高い「確定測量図」や「地積測量図」または「(14条)地図」を用いるべきであり、それらの図面がない土地の場合には、現況測量図等の境界確定していない簡易測量図がないか確認すべきであると考えます。(境界確定していなくても、現地で実際に測量した図面の方が、公図よりもはるかに精度は高いはずです。) 

測量図等が全くない場合にはやむを得ず公図を用いるケースもあると思いますが、法務局備え付けの「建物図面」を使うことも検討した方がいいと考えます。建物図面は、敷地に対する建物の配置や形状を表す図面と各階平面図が一緒になったものです。 

たとえば、一筆の土地の上に複数の貸家があって、貸家の敷地ごと評価単位を分けなければいけないときには、建物図面が有用な場合があります。 

図面の精度の問題のほかにも、公図を用いない方がいいと考える理由があります。公図上には距離の表示が一切ありません。したがって、公図により想定整形地図面等を作成する場合には、図面上の距離の測定は縮尺から計算(逆算)して求めるしか方法はありません。500分の1の公図上の1㎝は、1×500500㎝=5mといったやり方です。縮尺ごとの距離が測れる「三角スケール」を使って図面上の距離を測っている方も多いと思います。) 

しかし、縮尺から計算して距離を求める方法は、誤差が生じやすいと考えられるのです。たとえば500分の1の公図上での1㎜の誤差は500㎜=0.5mの誤差になってしまいます。 

その点測量図には、図面上に、実測で求めた精度が高い距離が数多く記載されています。間口や奥行の距離が測量図上にズバリ書いてあるケースもあるでしょうし、書いてなくても、求めたい間口や奥行の図面上の長さと、距離が記載されている箇所の図面上の長さを定規等でそれぞれ測って、対比計算をして距離を求めることができます。対比計算による方法は、作業図面がコピーの場合などで、原図と等倍であるかどうか確認ができない場合でも、縮尺に関係なく距離を求めることができるため有用です。 

(対比計算の例については、当ブログの『やさしい財産評価入門⑭~実際の間口・奥行距離の測定』を参照) 

次回に続く。「地図」「公図」「地積測量図」等の評価作業に用いる各図面についてはさらに詳しく解説する予定ですが、その記事を現在執筆中ですので、次回以降はいったん別のテーマを掲載し、執筆完了した時点であらためてこのテーマを掲載することとします。)