相続税申告のポイント⑰~私道の評価、セットバックを必要とする宅地の評価

 今回はまず私道の評価について解説しますが、私道の評価は利用状況により3つのパターンに分けて考えますという点と、固定資産税の非課税規定(公共の用に供する道路)と混同することのないよう注意してくださいという点については、当ブログの『やさしい財産評価入門⑯~私道の評価』の方に記載しましたので、そちらを参照してください。

 建築基準法42条2項道路に接している土地で、既にセットバック済みの道路後退部分で、外観上も道路の一部となっているものについては、その後退部分は後述するセットバックの評価ではなく、私道として評価します。 

また、住宅地図上には道があるのに、公図を見るとその道が確認できないというケースがあります。(都内の2項私道にも、たまに見られます。)セットバック済の後退部分の土地を分筆したものと、そうでないものが混在しているのです。

 私道部分が分筆されていない場合には、一筆の土地を、宅地と私道部分に評価単位を分け、私道部分については私道としての評価をします。左図のような通り抜け私道なら、私道部分の評価額はゼロです。なお、画地を分ける際の私道部分の地積については、対象地上の家屋の建築確認時の書類を相続人等に依頼して見せてもらえれば、配置図等の図面に、セットバック部分の後退距離や間口距離等の情報が記載してあるはずです。建築確認書類の保管がなければ(後述します)建築計画概要書を閲覧する方法もあります。それもない場合には、固定資産税が道路非課税としている部分があれば、その非課税地積を用いてもよいと考えます。)

セットバックを必要とする宅地の評価

 セットバックを必要とする宅地の評価(後退部分の3割評価、財産評価基本通達24-6の適用において確認すべき事項及び注意点は次のとおりです。 

①前面道路が建築基準法422項道路であるか、また、セットバックが必要な場所であるか、②セットバックの起点は道路の中心線か、それとも道路の反対側の境界線か(対象地の道路の反対側が崖地や水路等の場合)、③セットバックの距離は4m(中心線から2m)でよいか(条例等により4m以外の距離を定めている場合があります)、といった事項について、対象地の市区町村の建築指導課等で確認します。 

(建築基準法上の道路種別については、インターネットの地図情報で検索できるところも増えています。ネットでの検索は(前にも紹介しました)武藤康正さん作成の「(用途地域等検索のための)行政庁一覧」のホームページがお勧めです。そのHP内の「(指定)」が各都府県や市区町村の、建築基準法の道路図のページにリンクしています。)


 また、現地確認により、対象地がセットバック済でないか、さらに道路の反対側の土地がセットバック済でないか確認します。(対象地がセットバック済であれば、その後退部分は前述のように私道としての評価をします。道路の反対側がセットバック済の場合には、道路中心線の判断を誤らないよう注意が必要です。)

 セットバックの評価は前面道路に限りません。たとえば前面道路が建築基準法42条1項各号に該当する道路であっても、側方の道路や裏面の道路が2項道路であれば、各々セットバックが必要になります。 

したがって、対象地が接するすべての道路について、セットバックの必要性を判断することを忘れないようにしてください。 

セットバックの評価における「セットバックが必要となる部分の地積」を求めるためには、道路の幅員を把握する必要があります。 

そのためには、市区町村の道路管理課等で道路台帳図面や道路境界確定図などの写しをもらって、道路の幅員を確認します。インターネットで「道路台帳現況平面図」等の道路台帳図面を閲覧できるところも増えています。前述の武藤康正さん作成の「(用途地域等検索のための)行政庁一覧」のホームページ内の「(台帳)」または「(認定)」が道路台帳図面のページにリンクしています。) 

2項私道のなかには、道路台帳図面が整備されていないところもあり、市区町村の窓口では道路幅員が確認できないこともありますので、その場合には現地で道路幅員を実際に測定します。 

その他の方法として、同じ2項道路に接する近隣宅地にセットバック済のものがある場合には、そこの「建築計画概要書」を閲覧することができれば、建築計画概要書のなかの「配置図」にセットバックの後退距離が明記されています(対象地にセットバックが必要ということは、対象地は建物の建て替えが済んでいないということであり、つまり対象地自体の建築計画概要書は通常ありません。そこで、対象地の近隣の建築計画概要書を見ることにより、その2項道路のセットバック後退距離を把握するのです。できれば、対象地の道路を挟んだ向かい側や、対象地の隣地のものが理想です。)

建築計画概要書は、それを保管する都道府県や市区町村の建築指導課等で閲覧ができますが、閲覧申請の際には建築確認年月日・確認番号等の建築物を特定する情報が必要になります。(それらが不明の場合には担当窓口で相談してください。窓口備え付けの住宅地図等で確認できるところが多いようです。)

(参考1)建築計画概要書はそれ自体が公開情報ですので、所有者本人や関係者でなくても閲覧することができます。ただし、写し交付の可否については、市区町村等によって取り扱いが異なります(個人情報保護とのからみ)。

なお、建築計画概要書制度は、昭和46月1日施行の建築基準法一部改正によって発足したため、これより前に建築確認された建築物は、建築計画概要書自体がありません。また、その保存年限について過去に5年保存とされていた時期もあるため、保存されている期間(年限)も市区町村等によってまちまちです。

建築計画概要書の閲覧のために役所調査に行く前に、インターネットで担当課や保存期間、写し交付の可否等を調べてから行くのが効率的です。「都道府県または市区町村名」+「建築計画概要書」+「閲覧」などのキーワードで検索すれば、かなりの情報を事前に取得できます。

(参考2)筆者は、セットバックを要する部分の地積計算には、道路台帳図面から道路幅員を把握する方法より、近隣の建築計画概要書から後退距離を把握する方法を優先しています。建築基準法における道路幅員は、道路法における幅員とは異なる場合があるからです。

(参考3)豊島区の地図情報システムは、区が管理する道路の「路線番号」、「道路台帳現況平図」と建築基準法上の「道路種別」の確認が可能なうえに、2項道路等の「狭あい道路図面」も見ることができ、その図面でセットバックの後退距離までもネット上で確認できるすぐれものです。