相続税申告のポイント㉖~家屋の評価

 自用家屋は、その家屋の固定資産税評価額を1.0倍した価額で評価し(財産評価基本通達89、また、貸家は次の算式により計算した価額により評価するとされています(同通達93

 賃貸割合を乗じて計算することに注意してください。(賃貸割合は、貸家建付地評価におけるそれと同じです。詳細は、当ブログの「相続税申告のポイント㉓~貸家建付地の評価」参照)

 (参考)上記算式中の借家権割合は、全国すべての地域において30%となっています(令和元年分)。近年、この割合は変更されていないはずです。

 

その家屋の現況に応じた固定資産税評価額が付されていれば、家屋の評価が問題になることは少ないでしょう。しかし、家屋の増改築等を行ったものの、その増改築等の部分に応じた固定資産税評価額が付されていない場合に、単純に既存の固定資産税評価額のみで申告すると、増改築等部分の価額が申告もれとなってしまいます。(現に、相続税調査でもこの誤りを指摘されることが多いようです。) 

では、そのような場合には、どのように対処すればいいのでしょうか。

 

申告期限までに課税時期の現況に応じた固定資産税評価額が付された場合には、その固定資産税評価額により評価しますが、そうでない場合には、増改築等部分以外の部分の固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として次のように計算した価額を加算して評価するとされています。(この評価方法は財産評価基本通達には具体的な定めがありませんが、毎年の財産評価基準書(『家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率』のページ)に記載されています。東京都(令和元年分)の例はこちら。また、質疑応答事例にも同様の記載があります。) 

すなわち、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との条件差を考慮して評価するとされていますが、現実的には、付近で状況の類似した家屋を探すことも、その類似家屋の固定資産税評価額を入手することも非常に困難だと思われます。 

そこで(状況の類似した付近の家屋がない場合には)その増改築等に係る部分の再建築価額から、増改築等の時から課税時期までの期間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額により評価するとされており、実務的にはこの方法によることがほとんどだと思われます。 

なお、この場合の償却費相当額の計算は、文化財建造物である家屋の評価(財産評価基本通達89-2の定めに準じて、再建築価額から当該価額に0.1を乗じて計算した金額を控除した価額に、その家屋の耐用年数のうちに占める経過年数の割合を乗じて計算します。(再建築価額、耐用年数、経過年数については後日の当ブログにて解説します。また貸家の場合には、このように算定した増改築等部分の評価額から、更に借家権相当額を控除して計算します。)

 

(参考)上記の評価方法について財産評価基準書に記載されるようになったのは平成13年分以降です。また当時の償却方法は、構築物の定めを準用して定率法によるとされていましたが、現在のような定額法に改められたのは平成20年分以降になります。 

固定資産税評価額が付されていない家屋の増改築等の部分があるかどうかは、相続人へのヒアリングや、青色申告決算書・収支内訳書の「減価償却費の計算」欄の確認などの方法により把握するとよいでしょう。(非事業用の家屋の増改築等や(次回説明します)附属設備の有無については、確実に相続人へのヒアリング(確認)を行うことが必要であると考えます。) 

次回に続く